★★★★★★★

横浜在住サラリーマン36歳。娘と猫のミウと音楽の話などを中心に駄文を垂れ流します。

宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-

 昨年夏ごろから自分の中で宇多田ヒカルブームが来ています。
 

そもそも自分の彼女の楽曲との距離は、
・シングルはなんとなくリリース当初にメディアを通じて存在は知るけど別にすぐに飛びついたりはしない。
・でもアルバムは新作が出るたびにすぐレンタルして聴いてみる。
・その後、数年後に中古で購入。自身のライブラリーに入る。
ってケースが多いです。

 

人からどんな音楽聴くの?誰が好き?って聴かれて真っ先に出てきたりはしないけれど、割と自分の心の端っこの方に長年ずっと鎮座してる感じ。
と言うのも、どの曲もすごいと思うんだけど、曲に込められたエネルギーの密度が濃過ぎてずっと聴いていられないんだよね・・。
「ずっと聴いていられない」ってのは決して曲が悪いのではなく、それ位受け手の方にも集中力を要すると言うか、どうやっても心を持っていかれるような力があるって意味です。
「ながら聴き」とかできない、BGMではなくきちんと向き合わないといけない音楽なのです、おれの中で。
なんだろうね?

 

おれを惹きつけるのはやっぱりどうしようもなく溢れてくる彼女の「さみしさ」みたいなものなんだよなぁ。
「孤独」とも言えるのかも。

それが彼女のどの音楽からも鳴っているような気がするんだよね。
フリッパーズの曲の中に「分かりあえやしないってことだけを分かりあうのさ」っていう名フレーズがありましたが、まさにそれのこと。
(色んな要素があったとは思うけれど、このどうしようもない真理に誰もが共鳴したからこそ、当時彼女の1stは800万枚も売れたのではないかなと思ってます。800万枚って!)
 
 
と、前置きが長くなりましたが。
ようやく先日宇多田ヒカルのカバーアルバムを聴けました。
(メンツと選曲、オフィシャルサイトは下記)
 
f:id:nono-123:20150108120524j:plain
 
宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-」
02. 椎名林檎 / Letters
03. 岡村靖幸 / Automatic
04. 浜崎あゆみ / Movin' on without you
05. ハナレグミ / Flavor Of Life
06. AI / FINAL DISTANCE
07. 吉井和哉 / Be My Last
09. 加藤ミリヤ / For You
10. 大橋トリオ / Stay Gold
11. tofubeats with BONNIE PINK / time will tell
12. KIRINJI / Keep Tryin'
13. Jimmy Jam & Terry Lewis feat. Peabo Bryson / Sanctuary
 

 
いやはや、これがどれもとても素晴らしいです!
ずっとリピートしてるよ。
 
具体的にどこがよいのか?と問われるとかなり説明が長くなってしまいそうですが、
端的にいうと「既に完成度の高いオリジナルに対して、カバーした面々がきちんと自身の個性で対峙してるところ」と言いましょうか。
アルバムのサブタイトルの「解釈」って単語の選び方が言いえて妙だなぁと思います。
 
どうしようもなく切ない原曲を(基本的には)陽気なラテンで仕上げるという井上陽水のカバーの仕方はやはり彼にしかできない芸当だと思うし、
浜崎あゆみの前のめりで攻撃的な感じにはいい意味ですごく意地とプライドを感じる。
吉井和哉のカバーは実は元から本人の曲だったのではないか?と言うくらい楽曲へのシンパシーを感じるし、
LOVE PSYCHEDELICOは完全にいつも通りの自分たちのスタイルで飄々と歌い上げてる。
どれも聴いていてとても素晴らしくて心地いいです。
 
このアルバムが出るって知った当初は「オリジナルが完成し切ってるんだから、誰がやったって原曲を超えられる訳ないじゃん・・」って思ってたんだけど、
そういう次元のものではなかったのだと聴いてみて分かりました。
勝敗や優劣ではなく「こういうものとして別の形で存在するのもアリ」ってこともあるんだね。
(リミックスって言うと安易に打ち込み仕様になるケースとかがよくあるけど、そういう作品がひとつもなくてよかった・・)
 
しかしこれはカバーする側もすごいプレッシャーがあっただろうなぁ・・。
どの曲も知名度あってみんなが知っているわけだし、そういった強固な先入観(と言うかリスナーがオリジナルに馴染んでいる状態)に向けて、それとは別のものを提示するわけだもんね。
ある意味自分のオリジナルを聴かせるよりもアウェーな環境と言うか。
あとやっぱり宇多田ヒカルの楽曲ってすごく難しいと思うんだよね。
曲、歌詞、アレンジ、歌唱、あらゆる要素がそれぞれ宇多田印なのに、それらが全て集約されて一体化したひとつの作品になってる。
楽曲を再構築するに当たり、当然彼らはオリジナルのそれぞれの要素を分解したと思うんだけど、きっとその作業の中で「この曲はこうなってたのか!」とか「こんなすごいことやってたんだ?」とか感嘆するような瞬間が幾度もあったのではないかなぁと推測したりもします。
すごいスリリングだっただろうなぁ。
(あっ、おれは何の楽器も弾けないし音楽的知識は皆無なのであくまで全て推測です。)
 
これ、全員揃ったライヴとかやってくれないかなぁ。で、最後の本人登場!みたいな。
そんな夢の競演があったら絶対に生で観てみたい!
(絶対にないだろうけど・・)
 
 
そしてやはり彼女は元気でやってるかなぁ?なんてボンヤリ思ったりもするね。
再婚して本当によかったなぁ。彼女には心から幸せになって欲しいよ。
浜崎あゆみにしろ、海外の人と結婚するってのは日本人で彼女たちと本当の意味でフラットに接してあげられる人がいないってことなのかもなぁ・・。
(お前は彼女たちの何を分かってそんなこと言ってんだ?ってツッコミが聞こえますが・・)
 
結婚したからといって彼女の奥底にある孤独が消えることはないと思うけど(それは彼女ではなく自分のこと、全ての人に言えるか)、
それでも誰かと共にある喜びがあるのならば、きっと次回作はこれまでとはまた違ったものになるんだろうなぁ。
 
彼女に平穏無事な気持ちで過ごして欲しい、無神経で猥雑な世界から遠ざけてあげたいと思ってはいるけれど、
それもでやはり彼女の新作を聴きたいと思ってしまうのはしょうがないことだよね。
それがまた彼女を俗世に晒すことになってしまうとしても。
 
かなり勝手に「宇多田ヒカルは孤独の人である」と断定して話を進めてきましたが、実は全然そんなことなかったら面白いね。
 
 
と、ゆーわけで。
興味ある方はぜひ聴いてみてはいかがでしょうか。